便秘は食物繊維不足!

腸内細菌たちがどのように生きているのかを説明しておこう。

腸内での競争は過酷で腸内細菌たちは峻烈な栄養源の獲得競争を繰り広げている。そして、細菌たちの餌になるのは炭水化物なのだが、一口に炭水化物といっても莫大な種類がある。

例えば、コーンシロップに含まれる果糖の単糖分子は細菌も発酵させることができるが 人間が小腸で吸収してしまうため大腸にまでは届かない。

けれども、単糖分子が鎖状につながった多糖類、一方、3〜9個の単糖が結合したオリゴ糖、10〜数百の単糖が結合しているリンゴに含まれるペクチンも小腸では吸収されず大腸に達し、大腸内で急速に発酵する。

例マネギやキクイモに含まれるイヌリンは最大60もの果糖分子がつながっているが、ヒトゲノムにはイヌリンの化学結合を切断する能力をコード化していない。このため、人間に吸収代謝されることなく大腸内で細菌の餌になる。

 

一方、細胞壁を形成するセルロースは、ウシの胃やシロアリの腸内に生息する微生物は消化できるが、人間の腸内細菌も分解できないため、そのまま体外に排出される。

このように、微生物の食べ物となる炭水化物を「マック(MAC=Microbiota accessible Carbohydrates)」と呼ぼう。

 

腸内細菌の食べ物となるマックは数千種類もある。小麦のブランにもアラビノキシラン、キノコにもマンノースを主成分とするマンナンが含まれている。さて、これらは腸内生微生物は発酵させることで、短鎖脂肪酸へと転換していく。

つまり、細菌は人が消化できない繊維質を短鎖脂肪酸にまで分解してくれる。この短鎖脂肪酸は一日に食べる総熱量の6〜10%に相当する。高カロリーの食べ物が少なかった祖先にとってこのエネルギーは重要であった。

 

人類は1万2000年前まで狩猟採集で食料を得ていた。アフリカの狩猟採集民、ハッザ族の日当り100〜150gの繊維質を食べている。小麦も1万年以上も前から食されてきたが、以前の小麦は、固い繊維質の外皮も含んでいたつまり、本来、人間は古代からマックを食べてきた。

 

けれども、現在の食品は精製された小麦粉や大量の砂糖から作られている。このため、腸内細菌の餌がほとんど含まれていない。

FDAは成人男子では38g、女子では15gを推奨しているのだが、平均的な米国人は10〜15gしか摂取していない。

 

それでは、なぜ、腸内細菌は人間のためにエネルギー源を残してくれているのであろうか。それは、腸内には酸素がなく、このため、細菌は好気性代謝をすることができず、嫌気性代謝、発酵に頼らざるを得ないことである。第二は、料源は早く移動していくため、マックを急速に発酵させることができる菌が有利となり繁殖することである。

 

野菜食の重要性を指摘した先駆者たち

 

生活習慣病は食物繊維を食べないことが原因だ

 

Thomas-Cleave

Thomas-Cleave

食物繊維をもっと食べるべきだと最初に提唱した医師の一人にトーマス・クリーヴ(Thomas Latimer Cleave,1906?1983年)博士がいる。博士は、生活習慣病の多くは精製された穀類を食べ、食物繊維を食べないことが原因だと主張した。博士はイギリスの海軍医であった。水平は野菜や果物を食べることが少なく便秘に悩まされることが多かった。博士はブランを摂取することを推奨したのだが、多くの人は変人扱いしていた。

 

 

体内の毒素を排出した結果が排便量なのだ

 

Denis-burkittS

Denis-burkittS

 

アフリカの病院の外科医、デニス・バーキット博士の研究では、アフリカの農民は食物繊維を1日に60〜80gも食べていることがわかった。バーキット博士は、さらに食物繊維を多食するアジア諸国の疫学調査を行い、食物繊維と糞便量の関連性を丹念に分析した。

その結果は、

ケニア520g

マレーシア477g

ウガンダ470g

イラン349g

ペルー325g

インド311g

中国209g

国別の糞便量を見ればわかるように、食物繊維をよく食べる国の人ほどウンチが大きい。

それは、体内の毒素、すなわち、健康体の有害な不要物をどれだけ排出できているか?その排便量を意味している。

「その国の人の健康状態は、便の大きさを見ればわかる。便が大きい国では病院は小さくてすむ。便が小さければ大きな病院が必要だ」。

バーキット博士のまさに蘊蓄(うんちく)を込めた証言は、強い説得力がある。

 

ちなみに、アメリカ人の糞便量は日本人の4分の3程度の150g。排泄量が少ないのは、脂肪、タンパク質、糖質が多く、食物繊維が少ないからにほかならない。だが、食事の欧米化は、日本人の糞便量を確実に減らしている。

 

食事後、便が排泄されるまでの所要時間は、24〜72時間(1日〜3日)。人の便の成分は、水分、新陳代謝によって排出された腸内細胞、大腸菌などの腸内細菌、胆汁などの体内分泌液、未消化の食物繊維、体内毒素などだ。その内訳は、水分60%、腸壁細胞の死骸15%〜20%、細菌類の死骸10%〜15%、食べ物の残りかす5%だ。

 

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便の色は、通常は黄土色か茶色。この色は、腸内細菌が胆汁のビリルビンを代謝してできたステルコビリンという胆汁色素の色だ。ステルコビリンは、河川の糞便汚染の生物化学的マーカーとして利用されている。

 

便は摂取した食物の種類やコンディションなどによって、色調や形状が変化する。肉食などの動物性タンパク質を多食すると褐色がかり、細く小さくなる。

 

穀物、豆類、野菜類、食物繊維を多食すると、腸内のpHが低下するため、便が酸性化して黄色がかり、太く大きくなる。

食物繊維は、腸の中のビフィズス菌や乳酸菌、クロストリジウム、バクテロイデスなどの腸内細菌の働きによって、酪酸、プロピオン酸、酢酸などの短鎖脂肪酸という発酵物質をつくる。

 

その結果、腸内のpHが6以下に下がるので、腸内の酸性度が高まり、腸内細菌の活動や増殖がますます活発化する。腸粘膜が活性化し、免疫力が強まるため、発がん物質やがんのプロモーターとなる二次胆汁酸の発生が弱まり、体外に便として排出することにつながるのだ。

 

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野菜を食べないと腸の内壁が破壊され病気にかかる

 

Emmanuelle-Le-Chatelier

Emmanuelle-Le-Chatelier

 

フランス国立農学研究所(INRA)のエマヌエル・ル・シャトリエ(Emmanuelle Le Chatelier)博士ら国際研究チームが、2013年に発表した292人のデンマーク人の腸内細菌叢に含まれる遺伝子の調査結果がある。この研究によれば被験者は、2グループにわかれる。腸内細菌叢が豊かで、腸内に抗炎症性の細菌が棲息して単鎖脂肪酸が作られ痩せているグループと、炎症性細菌が多く肥満になりがちで、インスリン抵抗性も高く、2型糖尿病、心臓病、肝臓病へのリスクを抱えているグループである。同年、フランス国立保健医学研究所(INSERM)のオーレリー・コティヤード(Aurelie Cotillard)博士らが行った研究でも同様の結果が得られている。

 

ではなぜ、こうしたことが起こるのであろうか。いまでは理由が判明している。内細菌が鉱物とするマックには2種類がある。食物繊維に含まれているマックと腸の内壁を防御している粘液層だ。

 

ベーコン、白パンのトースト

朝は、卵、ベーコン、白パンのトーストを食べ、オレンジジュースを飲む。

昼にはポテトチップ、ソフトドリンク、白パンのサンドイッチを食べる。

夜には、肉、マッシュポテトを食べる。

こんな食生活をしていたらどうなるだろうか。腸内細菌はまったくマックが得られない。大腸の内表面は粘液層に覆われているのだが、食料が枯渇して飢餓状態に陥れば飢えた細菌は小腸の細胞が絶えず分泌する粘液の炭水化物を食べて生きるしかない。粘液層は細胞が直接的に腸内細菌と接触しないための防護壁なのだが、どんどんと薄くなり、防御機能が低下し炎症が起きることになる。

 

Malin E V Johansson

Malin E V Johansson

 

実際、2014年のスウェーデンのヨーテボリ大学のマーリン・ユーワンソン(Malin E V Johansson)准教授の研究によれば、粘液層が失われると、大腸炎になるリスクが高まることが判明している。

 

逆に野菜、穀類、果物を多く含む食事でマックを与えれば、多様な腸内細菌が繁殖できる。そして、腸内細菌叢の生態系も安定し、病原菌から身体を守ってくれるだけでなく、健康により短鎖脂肪酸を作り出す

 

Suzanne-DevkotaS

Suzanne-DevkotaS

 

2012年にシカゴ大学のスザン・デブコタ(Suzanne Devkota准教授が、太り過ぎの人に低カロリー、多繊維食の食事(水溶性の食物繊維が130倍)を与える実験を行ってみると、体重が減り腸内細菌の多様性が高まった。

 

 

老化も腸内細菌が健康ならば予防できる

 

そして、腸内細菌が若さを保つうえでも重要なことがわかってきている。中心的な細菌種は3分の1〜2を占め、何十年もその人の腸内にとどまり続ける。つまり、腸内細菌は驚くほど変化しない。

細菌の中にはひとたび腸内に陣取ると、他の細菌を寄せ付けないものすらいる。けれども、加齢とともに腸内細菌は変化していく。赤ん坊の腸内細菌は混沌としているが、その後、安定する。そして、歳を取るとともに再び混沌としてくるのである。砂時計をイメージしてもらえばいい。

 

Marcus-Claesson

Marcus-Claesson

 

2007年、アイルランドのユニヴァーシティ・カレッジ・コークでは、マーカス・クラーソン(Marcus J Claesson)博士らがプロジェクト「エルダーメット」を発足させた。その結果、高齢者の腸内細菌叢はかなりばらつきがあることがわかってきた。しかも、そのばらつきはランダムではなく、三つのクラスターからなっていることがわかってきた。

 

第一は長期療養施設で暮らす人と類似して多様性が低いものだ。歳を取ると腸内細菌は変化する理由のひとつは、食生活だ。咀嚼力の衰えとともに柔らかいものしか食べなくなっていく。必然的に繊維質に富む植物や固い肉は減る。施設に入ると、あまり噛まなくても良いようにとの高齢者への配慮から、食物繊維が少ない食事に変わる。実際、エルダーメットの研究では、入所後1カ月でそこに長くいる人と類似し始め、最長で1年もすればずっと施設で暮らしてきた人の細菌叢と類似してくる。そして、腸内細菌叢の変化に対応して身体が衰えることもわかってきた。

 

一方、第一は、若者層と類似したもの。第二は、ディケアと類似したもので、第一や第二では、腸内細菌叢の多様性が高く、短鎖脂肪酸も多く産生され、炎症マ―カーが低く、筋肉量が多く、認知機能も低下せず、健康状態も良好だった。

 

アイルランドで実施された高齢者の研究から、食物繊維が多い食事によって、腸内細菌叢が老化関連の病気を防ぐことがわかってきた。2013年にオビエド大学のアドリアナ・クエルヴォ(Adriana Cuervo)らの研究からも76〜95歳の人が多くの食物繊維を摂取したところ、単鎖脂肪酸が増えた。加齢に伴い、摂取カロリーは減っていく。一方、必要となるのは、栄養素である。米国のタフツ大学が米国の食事私信を高齢者の低カロリー向けにあわせ、食物繊維が多い野菜、果物、全粒穀物、豆類を重視したのは正しい。

 

 

食べ物の通過スピードも大切

 

Purna-kashyapS

Purna-kashyapS

 

メイヨークリニックのプルナ・カシャップ(Purna Cashyap)医師は腸内での食べ物の流れが腸内細菌叢にどのように影響するのかに着目する)。

 

下痢患者では食べ物が早く通過しすぎてしまうため、微生物が食物を分解する時間が足りない。一方、便秘患者では食べ物の速度が遅すぎる。いずれの場合も速度に適応した微生物だけが勢力を伸ばし、腸内細菌叢の多様性が減少する。これが腸内細菌の生態系を不安定にし、侵入する病原菌に資源を横取りさせることにつながる。つまり、下痢と便秘も悪循環につながる。野菜はこれほど重要だったのである。

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出典:有機野菜と腸内細菌で日本を変えよう